1/29【エッセイ】旅とは多様性のフィールドワーク

あなたのものがたり8

無理だとか無駄だとかいった言葉は聞き飽きたし、俺たちには関係ねえ

空条承太郎/ジョジョの奇妙な冒険

ハシモトくんのものがたり ハシモトくんとキムラさんとヨシイくん

…王さんは苦手や…

 ミュータントの話で盛り上がった、みんなの定例会の帰り道。となりで楽し気に話しかけるヨシイ君を見て、ハシモト君は思った。その少し後ろで、屈託なく笑うキムラさんがいる。

 俺は、一番やなかったんか…

 ハシモト君は、県内で一番の進学校へ進学した。キムラさんを除く、11人が学び育った、中学校では1番の成績だった。テニス部に所属し、キャプテンを務め、生徒会長にもなった。ルックスにも自信があった。ただ、自分が何か違う、劣等感のようなものを感じ出していた。

 王さん…そして、キムラさん。

 この二人は、自分よりできる人間だった。

 王さんは、ミックスのような彫りの深い顔立ち、大きくてブラウンの瞳、同じく茶色がかった髪を、センター分けしている。身長は優に185センチは超える。見る人見る人を魅了し、だれからも好かれていた。正義感も強く、女性に媚びない男だった。何より、弁が立つ。人を笑わせることにおいて、彼の右に出る者もいなかった。

 キムラさんは、高校になってからこの街に引っ越してきた。もともとは大阪に住んでいたが、ナイトウさんたちと同じ団地に引っ越してきた。彼女は京都の名門私立女子高で、特別進学コースに進学した。どうやら、彼女が望めば、自分ではなくキムラさんが自分の高校に入学し、自分はタナカさんやカンコとおなじ、2番手の進学校へ進むことになることになっていたらしい。

つまり、彼女は自分より成績が良かった。

 キムラさんは、魅力的だった。インド人のような大きくて丸い眼をしていた。常に冷静で、思慮深く、それでいて屈託なく笑う。優しく、強い女性だった。自分と違って、冷たくなかった。

 隣でキムラさんが爆笑をしている声に、目を向けると、キムラさんに顔を向けている王さんの後ろ頭が見える。

「あははははは!!やめ…あーーはっはっは!」

 キムラさんが、おなかを抱えてうずくまる。

 なにやってんのん?

 振り返ると、王さんが変顔をしていた。

 舌を出し、左にねじくれさせ、目は白目。頬の筋肉は弛緩し、知性のかけらも感じない。

 ハシモトくんは反応に困った。ただ、変な顔があるだけなのに、どうしてキムラさんはこんなに笑っているのだろう。何が面白いんだろう。

 「みてみて、ハシモトくん。俺、変な顔の仕方見つけてん。めっちゃへんなかおやろ?な!?な!?」

 ええ?ああ…

「あー、収まった。反則やわそれ。…はは。」

 キムラさんが、ハンカチで涙を拭いている。

 「なんやねんハシモとくんー。めっちゃおもろいやんこれ。」

 再び変な顔をした。この男にプライドというものはないのだろうか…。

「ぶぁっはっはっは!やめてやめ…あーっはっはっは!暴力反対!!」

 キムラさんの方を王さんが見ると、再びキムラさんが頽れた。

「なんでわからんかなー」

 真顔に戻り、首をかしげて王さんが呟いた。

 突然、キムラさんの目が鋭くなった。

 こぶしを握り、無言で王さんを殴りつけた。

「ぶべら!」

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 https://note.com/mikuriya_tetsuki/n/nbd6353a674f1

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この記事を書いた人

みくりやてつきのアバター みくりやてつき 所長(仮)

在住国:日本 現在地:愛知県 主に発達障がいの方を対象とした、IT特化の、就労移行支援事業所、サービス管理責任者。 精神保健福祉士 TOEIC840 日本語教師 作家

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