1/29【エッセイ】旅とは多様性のフィールドワーク

休職の理想と現実

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「休職したらいいのに」

昨年、二人の友人に休職を提案しました。

 二人とも、「わかっちゃいるけどやめられない」という旨の返答が返ってきました。

 どちらも家庭を持っているのが大きな原因だと思いますし、仕事に対する責任感も大きな理由なんじゃないかなと感じました。

健康はお金で買えない

 その通り。だから、医師から休職を勧められた時点で休職するのが正解。

 でも、二人とも休職をしていない。不思議でなりませんでした、昨年末までは。

「いつでも休職の診断書を書きますよ」

 昨年11月、心療内科の医師から僕自身も休職を勧められています。

 あれほど休職しない友人が不思議だったのに、結局僕はまだ休職していません。

 どう考えても休職したほうがいいのにです。

まさに、「わかっちゃいるけどやめられない」」です。

休職を勧められるまでのいきさつはいつも複雑

 自分を含めた三人が休職を進められるいきさつは、複雑です。

 三人に共通する理由は「責任感」にあると見受けています。

 家庭を支えるという責任、同僚や会社への責任、お客さんへの責任。

 自分の健康があってのものなのに、なぜか休もうとしない。

 責任より健康が大事なのに、責任の方が大事だからなのでしょうか。そうとしか見えないですよね…

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環境を変える

 休職に至る原因は、ひとつは環境だと考えています。

 無理な納期の仕事を求める職場。

 責任を押し付ける同僚。

 生活レベルの維持を余儀なくされる理解のない家族。

 環境を変えることで、休職する必要はある程度無くなるのかもしれません。

環境を変えてもらった

 ぼくが休職を進められるに至った大きな原因も、環境です。

 どうしても僕からマネジメントをうまく提供できない同僚がいたんです。

 うちの会社は僕の上司を除いて上下関係がないため、マネジメントする相手は部下ではなく同僚です。命令権はないですが、僕はそれがいいと思っています。

 そもそも人に命令なんてするものではないと思います。

 とはいえ、僕の常識やスキルでは、その同僚をうまくこの職場で活躍させて差し上げることはできませんでした。

 1年近く、その同僚が自分にはうまくマネジメントすることができず、なんとか異動してほしいと訴え続け、今年に入ってその方は異動することとなりました。

「あなたに休職を伝えなくて本当に良かった」

 この街に今の施設を立ち上げるために引っ越してから、最初に通院したクリニックの先生が言ってくださったことです。

 施設を立ち上げて、半年が経過した時のことでした。

 とてもやさしい先生で、涙を流してこう言ってくださいました。

「過去を背負って、ひとりでこの街に来て、一生懸命頑張ってきたあなたに、もしも休職を伝えなければいけないかと思うと…」

 精神科医が涙を流したことを見たことがなかったので、驚きました。

「あなたの施設に患者さんは紹介できないわ。あなたをこれ以上働かせるわけにはいきませんから。」

 そのクリニックから、今まで利用者さんを紹介されたことはありません。

 そのときすでに、僕の環境は良いものではないことを言われていただなぁ。今書いていて気づきました。

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労働環境の現実は理想から離れている

 自分が働きすぎていることに気づいたのは、その時からでした。

 最初に入職した立ち上げメンバーの同僚が手を焼き呆れて辞めても、まじめに働こうとしないその同僚。

 当時の自分は管理職経験がなく、その同僚にだけ責任があると思い、上司に「その同僚を変えてほしい。自分にはどうしようもない。」いうことを訴え続けていました。

 上司もその同僚には手を焼いていたようですが、立ち上げたばかりで人事異動ができる状態にはなく、何とかしてほしいというメッセージを伝えながら、様々な配慮をくださいました。

 最初の提案は、ぼくだけ朝の掃除をしないで、業務に集中すること。

 すると、ほかの同僚から不満が出てきたようです。上司はそれを僕に直接言うことは難しい。なんとなく察して、状況に応じて僕は掃除をする。

 次は半日の在宅勤務。

 すると、やはり特別扱いに同僚から不満の声が出る。僕自身は精神状態の悪さから被害妄想に取りつかれ、家にいる間にみんなから悪口を言われているような気分になっていきます。

 そのうち、休職を勧められるようになった。

 同僚は、年内をもって異動が決まりました。

 年末の繁忙期になると、その同僚が仕事を回しきれず、破綻しかかった状態で仕事は進みます。

 自分がミスをしているような気はするけど、そもそも何をやったらいいのかわからない。

 同僚の言動からそれが読み取れました。

 能力の限界。それは、責めてはいけない残酷な現実でした。

 そして、それはその同僚の実務能力だけではなく、僕と上司のマネジメント能力の限界でもありました。

「もう仕方がない。」

 僕、上司、そしてその同僚3人とも、そんな認識だったんじゃないかなと思います。

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余裕のある仕事を維持する

 休職を勧められながらも、もう少し頑張ることを決めたのが昨年末。

 それは、せっかく環境を変える決断をしてくれた上司と会社に対する感謝の気持ちが理由です。

 ですが、休職を勧められている状態というのは、普通の仕事も満足にできない状態ということのようです。

 当たり前にできていたことができません。

 さっき聞いたことが思い出せない。

 次に起こるあたりまえのことが予測できない。

 いつもこなせる量の仕事ができない。

 だんだん周りに責められているような気持になる。

「やっぱり休職したほうがいいんじゃないかな。」

 それも正直な気持ちです。

良い支援をするには余裕のある環境が必要

 年をまたぎ、自分の仕事を振り返ると、一生懸命だったと思います。

 それ自体素晴らしく、ある程度立ち居上げに貢献できたんじゃないかと思っています。

 一方で、一生懸命だと余裕がなかったなぁと。

 支援員が余裕なく、カリカリしていると利用者さんに伝わります。

 ましてや管理職がカリカリしているなんて、言わずもがなじゃないかなぁ。

新年の抱負は「やさしいしょくばづくり」

 去年までの僕は、ひとにやさしくないときがありました。

 一生懸命やらなくちゃと、やらなくてもいい仕事をやっていたように思います。

 結果として、同僚の働きやすさに無頓着なところがありました、反省。

 何よりも、僕は自分を大切にしていなかった。

 しんどくならないように、少な目に仕事をすることから始めました。

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「どういう指示を出せば、働きやすいですか?教えてもらえればうれしいです」

 今年、同僚にそう質問しました。

 主婦と支援員をこなす元エンジニアの精神福祉さんで、素晴らしい経験と実力の持ち主です。

 とても優秀な方で、しばしば想定以上の仕事をこともなげにやってくださる方です。

 きっと僕と同じ仕事をしたとき、僕よりも結果を出す方だと思っています。

 ですが、僕の指示によく眉をひそめられているんです。

 出した指示に対して、具体的な期日やルールを確認されることが多い。でも、十分な説明意をせずともこちらの指示の深いところまで理解して、素晴らしい判断をされる。

 自由に判断していただければ、良い結果を出す方だと思っていた。

 でも、この指示はどうも違う。適切な指示ができていない。

 わからないなら、本人に聞けばいい。

「すみません、どういう指示をすれば働きやすいのか、どうも僕は理解できていないみたいで。期限や詳細な指示を出した方がいいんでしょうか。教えていただければ。」

「聞いてくださってありがとうございます。じつは…」

 すこしずつ、ですがはっきりと自分の欲しい形の指示を教えてくださいました。そして、

「聞いてくださってありがとうございます。そうしてくださるとうれしいです。」

 そう返事を下さいました。

 対面での素直なコミュニケーションが成立する職場。

 今年はきっと、去年よりいい仕事ができる。

 そんな気持ちになりました。

 ありがとう。

わからないことがあったら、聞く。できない仕事はできないと言う。間に合わないときは早い目に報告する。

 働きやすい職場は、この原則が成立することが大事なんじゃないか。

 常日頃そう思っていました。

 そのためには、風通しのいい職場環境が必要だと思います。

 異動した同僚にとって、僕に質問は難しかったと思います。

 「できない」と言えるほど、ぼくはにこにこしていなかったんじゃないでしょう。反省。

 でも、間に合わない仕事を放置するのだけは、カンベンな。

「らくに働ける環境を作りましょう」

 新年の朝礼で、僕は言いました。

 「みくりやさん、”らく”はやめましょう」

 上司が困ったようにそっと言いました。

「週5日8時間労働は重労働。今日は祝日。帰って何をするかを楽しみに、訓練してくださ~い♪」

「今日は華金、帰り道においしいものを食べて、体重計には乗らずにいぐっすり寝てくださ~い♪」

 これから働こうとする利用者さんには、労働よりもまず人生を楽しむことを意識してほしい。

 そんな気持ちで朝礼の言葉をお伝えすると、怪訝な表情をされます。

 これから厳しい一般就労をされる方には、ただの無責任な言葉にしか聞こえないんだろうなぁ…。

 訓練終了時間を読めず利用者さんから眉を顰められる。嗤ってごまかす僕は、無責任に見えるかもしれない。

 生活保護を受ける利用者さんを「働きたくないのは当たり前だから」と笑い飛ばす僕に背を向ける、新入社員のあの方は、おこっているかも。

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「人の気持ちも知らないで」

 そう、人の気持ちはわからない。

 笑顔で訓練していた明るいあの同僚の陰には、常にミスをかばっていた僕がいる。

 激しい言葉で同僚を罵る僕に、心をすり減らして寄り添っていた上司がいる。

 何が起こっているのかわからないけど、何とかしたくて、でも何もわからず戸惑っていた同僚がいる。

 言葉にならない気持ちを、三者三様抱えながら、明日になれば日は昇る。

本当は、休みたい。

 ゆっくり休んだ方が、いい仕事ができるに決まっている。

 毎日自責心にかられながら、変わりゆく職場をじっくり眺めている自分がいる。

 時に衝動的に逃げ出したくなる時がありますが…

休職の決断は本当に難しい。

 いつか、あんまり働かなくてもいい社会が来たらいいのになぁ。

 怠け者という言葉に違和感を感じる人が増えたらいいのになぁ。

 自分を愛せる日が来たらいいのになぁ。

「よくやってるよ」

 布団に入り、眼を閉じながら、自分にそう話しかけることが増えました。

 そんな時、自然と頬が緩むのを感じます。

 そんなことは今までになかった。

 自分を労わっている??

 あれ、もしかして…

 もしかして…

今年の自分は一味違うかもしれません。

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この記事を書いた人

みくりやてつきのアバター みくりやてつき 所長(仮)

在住国:日本 現在地:愛知県 主に発達障がいの方を対象とした、IT特化の、就労移行支援事業所、サービス管理責任者。 精神保健福祉士 TOEIC840 日本語教師 作家

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